合成界面活性剤は肌に悪い?【天然界面活性剤との違いを解説】洗顔料に欠かせない理由とは。
- 合成界面活性剤が含まれていると肌が荒れるの?
- 天然由来の界面活性剤なら肌トラブルはなくなる?
- 合成界面活性剤は避けたほうがいいのか教えて欲しい!
合成界面活性剤は洗顔料に欠かせません。天然素材の界面活性剤だけでは充分な洗浄力が期待できないからです。
界面活性剤は洗顔料の主洗浄成分。そのため洗浄力や安全性、使用感にもっとも影響を与えます。
この記事では、合成界面活性剤が洗顔料の使用感に大きな影響をあたえる理由を解説します。記事を読めば、合成界面活性剤フリーの洗顔料を探す必要はなくなります。
洗顔料の主洗浄成分である界面活性剤を知りましょう。肌に優しい洗顔料を選ぶには、界面活性剤が使われる理由を知ることが大切です。
参考文献
- 酒井裕二(1999年):理想的な洗顏料の開発「日本化粧品技術者会誌33巻2号 p. 109-118」
- 佐藤千尋(2013年):水性洗顔料の使用方法と肌への影響~肌にやさしい理想的な泡による洗顔について~「日本化粧品技術学会誌47感2号p93-99」
- 柿澤恭史(2018年):洗浄料とその作用「日本香粧品学会誌42巻4号」
- 南野美紀(2018年):化粧品の種類と使い方-スキンケア化粧品-「日本香粧品学会誌42巻2号P109-124」
- 山下裕司(2020年):化粧品分野における界面活性剤の新展開「色材協会誌93巻3号P84-90」
- 齋藤俊和(2021年):界面活性剤の基礎-セッケンと合成洗剤-「化学と教育69巻4号」
合成界面活性剤が肌に悪いとされる3つの理由
合成界面活性剤が肌に悪いとされる理由は以下の3つ。
- 洗浄力が強い
- 浸透力が高い
- 皮膚に残りやすい
合成界面活性剤は肌に悪いものばかりではありません。刺激が強い一部の成分が悪い印象を与えているのです。
≫【洗顔料の洗浄成分】界面活性剤について正しく知ろう!汚れを落とすメカニズムとは?
洗浄力が強い
合成界面活性剤は洗浄力が強いものが多いです。洗浄力が強すぎるとバリア機能を損なう可能性があります。
過剰な脱脂は皮脂膜や角質細胞間脂質にある脂を流出させます。汚れだけでなく、必要な脂まで洗い流してしまうのです。
合成界面活性剤はすべて洗浄力が強い?
合成界面活性剤とは天然に存在しない界面活性剤のことを指します。そのため肌にやさしいイメージがある石けんも合成界面活性剤です。
石けんは、高級脂肪酸とアルカリを化学的に反応させてつくるのが一般的です。高級脂肪酸とは、天然の動植物由来の成分(ラウリン酸、ミリスチン酸など)になります。
しかし一方で、アミノ酸系界面活性剤やノニオン(非イオン)性界面活性剤は肌への刺激性が低いです。アミノ酸系界面活性剤は肌とおなじ弱酸性を示し、ノニオン性界面活性剤は、水に溶けたときにイオン性を示さないからです。
合成界面活性剤にも肌にやさしい成分はあります。ただ刺激性が弱い反面、洗浄力に劣ることは知っておきましょう。
肌トラブルを引き起こす原因には、過剰な脱脂(洗顔)が考えられます。アミノ酸系界面活性剤やノニオン性界面活性剤を選ぶことで、余計なトラブルを避けられる可能性があります。
浸透力が高い
浸透力は皮膚と汚れ(油)の間に界面活性剤が侵入していく働きのこと。界面張力が低下することで、皮膚から汚れを剥がせるのです。
皮膚に吸着した汚れ(油)を落とすには界面活性剤のぬれ性が有効です。ぬれやすくなることで、汚れは皮膚から剥がれるのです。
≫【洗顔料の洗浄成分】界面活性剤について正しく知ろう!汚れを落とすメカニズムとは?
合成界面活性剤は浸透力の高さから肌内部まで侵入すると言われることも。しかしこれは、肌内部に侵入しているのではなく、過剰な皮脂の脱脂により、肌が乾燥しているのが原因だと思います。
肌へ浸透する?
台所洗剤で手が荒れた経験のある人は多いと思います。私は5分以上続けていると肌がピリピリしてきます。
台所洗剤にはカチオン系(陽イオン性)界面活性剤と呼ばれる殺菌効果のある界面活性剤が使われます。ちなみにカチオン系には、柔軟、帯電防止効果があるためシャンプーにも使われます。
台所で食器を洗っているときや、お風呂でシャンプーしているとき、界面活性剤は体に浸透しているのでしょうか。
もしそうなら、怖くてシャンプーなんかできません。食器洗いも手袋をします。
肌にはバリア機能があることお伝えしました。界面活性剤によりバリア機能が低下することはあっても、内部にまで浸透することは無いと思います。
皮膚に残りやすい
合成界面活性剤は洗顔後も皮膚に残りやすいものがあります。ラウリン酸カリウムはとくに注意が必要です。
界面活性剤は汚れ(油)に吸着することで効果を発揮します。洗浄力が高いと吸着力も高くなるのではないでしょうか。
洗顔前に水やぬるま湯で予洗いをしておきましょう。洗顔後の皮膚に界面活性剤が残りにくくなります。
界面活性剤が残ったままだと肌への刺激となります。せっかく汚れを洗い流しても、別のものが肌に付着しては意味がありません。
洗顔の仕方が間違っていることも
皮膚に残りにくい(刺激の弱い)洗顔料を使っていても、洗顔の仕方が間違っていては無意味です。
洗顔前後には、ぬるま湯でしっかりと洗い流すことが大切です。
洗顔料に合成界面活性剤が必要な3つの理由
合成界面活性剤が肌に悪いとされる理由について解説しましたが、ここからは合成界面活性剤が洗顔料に与える影響について解説します。
洗顔料は、次の3つのバランスを調整しながら作られます。合成界面活性剤はこの3つにもっとも影響を与える成分です。
- 洗浄力
- 安全性
- 使用感
界面活性剤は洗顔料の主洗浄成分。合成界面活性剤の種類は無数にあり、組み合わせ方によって洗顔料の特徴は変わります。
オイリー肌の人、敏感肌の人、乾燥肌の人、それぞれ使いやすい洗顔料は違います。
≫【洗顔料の洗浄成分】界面活性剤について正しく知ろう!汚れを落とすメカニズムとは?
洗浄力
合成界面活性剤は洗浄力に優れます。親油基と親水基の組み合わせにより、洗浄力に優れる洗顔料が作れるからです。
洗浄力と泡立ちが良くなる界面活性剤を作えば、天然界面活性剤にはない性能が得られます。
男性の皮脂の分泌量は女性の1.5倍。男性用の洗顔料には洗浄力が欠かせません。
安全性
合成界面活性剤は天然界面活性剤より安全性に劣ります。洗浄力や泡立ちの良さを目的に作られる界面活性剤だからです。
この記事での安全性は、肌への刺激性を指します。洗顔後の肌のつっぱりや、チクチクするものは安全性が低いものとします。
洗顔料の役割は皮膚を洗浄して汚れを落とすこと。洗浄力を高めるため安全性が低下するのは避けられません。
無刺激なものが良い洗顔料ではありません。しっかり汚れを落とせて、保湿もされるバランスよく保たれているものがいい洗顔料です。
使用感
泡立ちの良さは洗顔料に欠かせません。本来の効果が発揮されないからです。
洗顔するときは、直接肌に触れないよう優しく洗うのが基本です。泡立ちが良いものは泡に弾力があり、肌の上を転がすように洗うことができます。
泡立てるのが苦手な人は、上手な人の100倍以上も濃い濃度の泡で洗顔している実態があります。(参考文献②より)
泡立ちに優れる合成界面活性剤は、使用感の良さだけでなく、安全性を確保することもできるのです。
天然界面活性剤と合成界面活性剤の違い
界面活性剤は以下の2つに分けられます。
- 天然界面活性剤
- 合成界面活性剤
天然界面活性剤の特徴
もともと自然界に存在している界面活性剤。水と油を混ぜ合わせる乳化作用がおもな働きとなります。
- レシチン
- カゼイン
- サボニン など
牛乳やマヨネーズが安定した状態を保っていられるのは、天然界面活性剤の働きによるものです。
洗顔料に求められる働きは洗浄能力です。天然界面活性剤は高い安全性と乳化作用に特徴があります。
天然界面活性剤は、化粧水や食料品に使われることが多い界面活性剤です。
合成界面活性剤の特徴
動植物や石油が原料。天然界面活性剤とは違い、人の手で化学的に反応させて作る界面活性剤です。
親油基と親水基の組み合わせにより、様々な特徴をもった合成界面活性剤が存在するため、複数の合成界面活性剤を組み合わせて使います。
合成界面活性剤の種類は無数にあり、成分名称だけでは、動植物と石油のどちらを原料にしているか判断できないことも。
洗顔料には、肌への刺激を抑えながら汚れを落とす合成界面活性剤が必要なのです。
合成界面活性剤について知ろう
ここからは、合成界面活性剤についてもう少し詳しく解説します。
- 石油系界面活性剤が肌に悪いのは昔の話
- 石けんを例に合成界面活性剤を解説
石油系界面活性剤が肌に悪いのは昔の話
石油由来の合成界面活性剤は肌に悪いと言われることも。石油由来の鉱物油は肌の皮脂とは構造が異なるため、肌のバリア機能を破壊して浸透することはないのです。
「石油由来は肌に悪い」という天然志向が原因ではないでしょうか。
石けんを例に合成界面活性剤を解説
界面活性剤は親油基と親水基によって構成されます。
石けんを例に解説すると、一般的に親油基には高級脂肪酸、親水基には水酸化ナトリウムが使われます。
高級脂肪酸塩
高級脂肪酸には、以下のものあります。
- ラウリン酸
- ミリスチン酸
- パルミチン酸
- ステアリン酸
- オレイン酸
合成界面活性剤の洗浄力、安全性、使用感は親水基と親油基の組み合わせ方によって大きく変わります。
石けんは肌に優しいイメージがありますが、実は洗浄力が高い合成界面活性剤です。
ラウリン酸は刺激性が強い
ラウリン酸は肌への刺激性が強いことが報告されています。皮脂への吸着力が高いだけでなく、スティンキングを引き起こすことがあります。
洗顔後にチクチクしたり、ヒリヒリする一過性の痛みを伴う現象。
ラウリン酸カリウムはとくにスティンキングが強いとされています。
洗顔料によっては、ラウリン酸フリーの表記があることも。これは、敏感肌用の洗顔料であることを表している場合が多いです。
洗顔の仕方が間違っていることも
洗顔後にヒリヒリしたり、つっぱる感じがある場合は洗い方が間違っている可能性があります。
間違った洗い方を続けていては洗顔料を変えても無意味です。どんなに肌に優しい洗顔料でも使い方次第で肌への負担は大きくなるからです。
顔に直接触れない
泡立てた洗顔料は、顔のうえを転がすように優しく洗います。手のひらが直接顔に触れないようにしましょう。
摩擦は肌の負担になります。泡立てた洗顔料で包み込むように洗うだけで充分に汚れは落とせます。
どうしても顔に触れてしまう人は、より泡立ちが良いものを選びましょう。
濃密が泡が立つものは顔からこぼれ落ちにくいです。
洗い流す温度はぬるま湯
ぬるま湯(体温より少し低い温度)がもっとも効果的な温度です。高水温での洗浄は過剰な脱脂につながります。
界面活性剤は一定の温度以上にならないと充分な洗浄効果が得られません。そのためクラフト点と呼ばれる温度以上で洗う必要がありますが、温度が高すぎると過剰な脱脂につながります。
過剰な脱脂を避ける理由は、肌本来のバリア機能を損なうから。皮膚の表面に形成される皮脂膜が外的な要因や、肌の水分の蒸発を防ぐ役割を担っているからです。
洗浄力が高すぎると余計なトラブルを引き起こす可能性が高まります。洗い過ぎないことが大切ですよ。
予洗いをする
洗顔料を使う前に、水またはぬるま湯で洗いましょう。界面活性剤が肌に残りにくくなります。
汚れを綺麗に落としても、界面活性剤が肌に残っていては逆効果です。界面活性剤は肌への刺激になるからです。
洗い流す温度が低すぎると界面活性剤が解けずに、肌に残る原因になります。
泡立てが苦手な人は注意が必要
泡立てるのが苦手な人は洗浄力と起泡性に優れる洗顔料が向いている可能性があります。泡立ちの悪さが原因で、肌に余分な刺激を与えているからです。
泡立てるのが苦手な人は、上手な人の100倍以上も濃い濃度の泡で洗顔しているのです。(参考文献②より)
洗い方を変えても使用後の肌のつっぱりや、スティンキングを感じる場合は、洗浄力が高く、吸着性が高い物質が含まれる洗顔料は避けるのが無難です。
≫【洗顔料の洗浄成分】界面活性剤について正しく知ろう!汚れを落とすメカニズムとは?
洗い方を見直しても肌をつっぱる人は洗顔料を変えよう
この記事では、合成界面活性剤が肌に悪いとされる理由について解説しました。
- 洗浄力が強い
- 浸透力が高い
- 皮膚に残りやすい
しかし洗顔料には合成界面活性剤が欠かせません。洗浄力と使用感を高めるために必要だからです。
それでも肌への刺激が気になる人には、石油系界面活性剤が含まれていない天然志向の洗顔料がおすすめです。
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洗浄力 | |
保湿力 | |
使用感 | |
配合成分 | |
総合評価 |
上表は以下の4項目について5点満点(0.5点刻み)で採点しました。
洗浄成分にはミリスチン酸とパルミチン酸、ステアリン酸は動植物油脂を原料とする脂肪酸が使われています。石油系界面活性剤、鉱油油、アルコールが含まれていないので、自然志向の人におすすな洗顔料です。